ここのところ、台湾で外国人を祀っている廟に関心を持ち、できるだけ足をのばして見に行くようにしている。オランダ人もいるが、日本人が多い。地域分布で見ると、南部に多く、中には台南の飛虎将軍廟や高雄の紅毛港保安堂のように日本側と積極的に交流しているケースも見られるが、他方で、全体的に見て北部には少ない。これがどのような要因によるのかは検討する余地があるだろう。


  北部で日本兵を祀った珍しいケースとして、新北市五股区にある「兵將官祠」を訪れた。MRT中和新蘆線の終点駅・蘆洲で降り、バスに乗って「新興公寓」で下車。最初は歩いて行こうかと思ったのだが、事前に地図を確認したところ、淡水河に流れ込む支流にかかった自動車専用大橋を渡る様子で、徒歩で行くのは難しそうなので、念のためバスにした。


  橋を渡りきり、複数の大型道路が交差する脇のところに「兵將官祠」はひっそりとたたずんでいた。道路に面しているので、場所はすぐ確認できる。自動車の往来が激しくて、排気ガスにむせかえる。

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  中に入ると、お線香がともされていたので、細々とながらも祭祀は続けられているようだ。真ん中に祀られているのが、見たところ日本兵のように思える。

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  台湾の人のブログで、近所の人から聞き取った内容が書きとめられていた(https://bobee.nownews.com/20180621-22460)。それによると、ここに日本兵が祀られたのは戦後のことらしい。


  日本が戦争に敗れ、植民支配が終わると、当然ながら日本軍兵士も引き揚げることになった。ところが、何らかの事情で引き揚げられなかった日本兵が居場所もなく、やむを得ずこのあたり五股成仔寮に残っていた。彼らは飢えをしのぐため、現地住民のサツマイモを盗んで食べていたところを見つかり、殴り殺されてしまった。その後、日本兵の亡霊によって不吉な出来事が続いた。恐れおののいた現地住民は彼らの気持ちを静めるため、祠を建てて祀ったのだという。


(写真は2018年8月5日に撮影)