港千尋『革命のつくり方 台湾ひまわり運動──対抗運動の創造性』(インスクリプト、2014年)

  中国との「サービス貿易協定」が台湾にもたらしかねない悪影響への懸念から世論の反発が強いにもかかわらず、与党・国民党は多数を占める立法院(国会)でまともな審議もしないまま強行採決しようとした。ふとしたスキをついて学生グループが立法院に入り込んで座り込んだところ、世論の大きなバックアップを得たこの占拠活動は585時間の長きに及んだ。このいわゆる「ひまわり学生運動」は、最終的には王金平・立法院長の仲介で終息を迎えることになる。

  民主主義の具体的制度化としての代表制が機能不全に陥り、その「見せかけ」の欺瞞に彼らは気づいた。「今日の革命とは代表制の限界を明らかにし、別の政治のつくり方を考えること、そのための創意工夫に求められる。その実験は世界中で始まっているが、太陽花運動の学生はそのやり方をストレートに示してみせた」(90~91頁)と著者は評している。

  社会的なプロテストとして群衆が声を上げる行動。最近では2011年の「ウォール・ストリートを占拠せよ」運動が世界的に広がったことも記憶に新しい。こうした抗議行動のグローバルな横の広がりという視野の中で「ひまわり学生運動」の意義をめぐって思索を進めるのが本書の趣旨である。ただし、群衆行動の「革命」性という著者の問題関心に引き付けた内容であって、必ずしも台湾の政治・社会・歴史に内在的な要因をもとに分析しているわけではない。

  例えば、立法院占拠の当時、私も周囲を見て回ったことがあるが、一つ気付いたのは、学生たちは立法院側面のストリートで座り込みをしていた一方、立法院正門前には台湾独立運動の旗を掲げた老人たちが集まっていたこと。両者の雰囲気の相違は際立っており、棲み分けをしているように見えたのが印象的だった。こうした台独派老人たちの姿は本書では完全に無視されており、その影すら見当たらない。著者の問題関心のパースペクティブの中で彼らの存在を取り込もうとすると、テーマ上の整合性が取れなくなってしまうからだろう。しかしながら、90歳代半ばの「台独大老」史明が立法院内に現れ、「ひまわり学生運動」のリーダーたちと握手している姿も報道されており、こうした関係を全くオミットしてしまうわけにもいかないのではないか。あくまでも学生たちの行動に著者なりの「希望」を仮託しながら再構成された「記録」なので、この点は注意しながら読む必要がある。