台湾の書籍や文化を紹介するサイト「もっと台湾」に連載中の「台湾史を知るためのブックガイド」にて「台湾原住民族の復権運動」と題して寄稿しました。11月には霧社事件を、12月の前半部分では映画「サヨンの鐘」と高砂義勇隊をテーマとして台湾原住民族に関連する書籍を紹介してきましたが、今回は戦後に焦点を合わせています。
http://motto-taiwan.com/2014/12/1204/

  台湾原住民族に関して日本でも研究は進んでいて、専門的な論文や学術書は一定数積み重ねられています。ただし、一般読者向けにお薦めできるものは実際には限られてしまいますし、私自身の力不足もあって網羅的にご紹介できなかったのは残念です。

  台湾原住民族の戦後を考える上で一つの焦点となるのは、民主化運動の高まりと並行する形で周縁化されてきた自らの尊厳を取り戻す主張が現われたことです。政府認定の原住民族の数が増えているのもそうした動向が背景となっています。

  私がもう一つ焦点としたかったのは、日本の敗戦直後から台湾原住民族のリーダーたちの間で原住民族自治を求める動きが実際にあったことです。寄稿した文章の中でツォウ族の高一生(矢多一生、ウオグ・ヤタウユガナ)、タイヤル族の林瑞昌(日野三郎、ロシン・ワタン)といった人たちに言及しました。彼らについて知ることのできる日本語文献は限られているのですが、『高一生研究』(2005~2008年、全10号)という専門研究雑誌がありますので、国会図書館等へ行く余力のある方はご参照ください。