ふぉるもさん・ぷろむなあど

台湾をめぐるあれこれ

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(運営者:黒羽夏彦 /黑羽夏彥/KUROHA Natsuhiko 2014年1月開設)

  先日(2019年6月8日)、福岡大学にて開催された日本台湾学会第21回学術大会にて、「日本統治初期台南におけるキリスト教を媒介とした異民族交流──秋山善一・珩三兄弟を事例として」と題して研究報告をしましたので、その時のパワーポイント資料をここに掲げておきます。 


  今回は大東和重先生の熱意によって分科会(歴史学)「台南研究──日本統治期の台南で活動した日本人たち」をセッティングしていただきましたおかげで発表の機会を得られました。やはり台南在住の先達・鳳気至純平先生も「自分史、地方史としての台湾史、そして台南史――國分直一の台湾史関連論考を事例として」のタイトルで発表されました。コメンテーターとして登壇されました植野弘子先生、角南聡一郎先生からはそれぞれ示唆に富むコメントをいただきましたし、フロアからも貴重な質問をいただきました。改めて感謝を申し上げます。 


  私の発表は、自身の修士論文『日治初期日本基督教徒在臺活動與人際關係之研究:秋山善一、秋山珩三兄弟為中心』(こちらでダウンロード可能)の内容を踏まえつつも、1900年前後の台南における在住日本人の状況を踏まえて比較検討する方向をとっています。比較対象とした陸軍通訳出身のアジア主義者たちについては、今回の発表では仮説的に言及したにとどめておりますが、引き続き調査を進めたいと考えています。今回はテーマ設定上の事情から色々な材料を詰め込み過ぎてまとめるのに一苦労したのですが、今後、論文として書き直す際には、秋山兄弟とそれ以外の話題とを分けて、それぞれ別の論文に仕上げる方が良いだろうと考えています。 


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  台湾の廟宇の梁の部分にはたくさんの扁額が掛かっている。中には歴史上の人物や著名人(政治家や地元名士)の名前入りのも混じっており、眺めていると、その廟の社会的ポジショニングが見えてくるところが面白い。孔廟とか大天后宮のようなメジャーどころだと歴代総統の扁額がかかっているのだが、その並べ方にどのような規則があるのかは気になっている。


  沖縄県那覇市で首里天后宮を運営されている當原さんが台南へいらっしゃったので、市内をご案内した。大天后宮(媽祖廟)へお連れしたとき、私はぼんやり廟中の天井を眺めていたのだが、偶然、日本人の扁額を二つ見つけた。ここへは頻繁に来ていたはずなのだが、灯台下暗しというか、今まで気づいていなかったのが不思議なくらいだ。


  一つは、「媽祖信仰中日親善提携 祀典台南大天后宮 天上聖母分霊記念 霛顯扶桑 日本国岐阜市長上松陽助 日本昭和四十九年」と記されている。岐阜市在住の高橋夏三郎という人物が政治家も巻き込んで岐阜への媽祖分霊を働きかけ、1969年に北港朝天宮から分霊されていたことは知っていたが、台南にもこんな扁額があったとは。


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  実は以前、台中市の海側に位置する梧棲朝元宮を参観した際、堂内に二通の日本語の手紙が額に入れて飾られているのを見かけたことを契機に、この高橋氏について調べ始めたことがある。その一通は1971年に上松陽助・岐阜市長(当時)から送られたもので、媽祖のご加護で当選できたことへのお礼を高橋夏三郎氏に託したという趣旨の内容である。もう一通は「宗教法人日本朝天宮 代表役員高橋夏三郎」の名義で、梧棲朝元宮が昭和天皇快癒の祈願を行ったことへのお礼として平成元年一月吉日の日付で送られている。その当時の日台の新聞報道(聯合報、中日新聞、岐阜日日新聞)でも関連する記事が掲載されており、それらによると、北港朝天宮から分霊された媽祖像を高橋氏が日本へ持ち帰ったのは確かで、岐阜市に聖母堂(媽祖廟)建設の計画があるとのことも報じられていた。ところが、私はわざわざ岐阜市まで調査に行ったのだが、結局、その痕跡すら見つけられなかった(こちらを参照)。


  今年、別件である仏教学者の方にお会いしたとき、その方が東京朝天宮とも関わりがあると知って、岐阜市の媽祖廟について何かご存じないかお尋ねしてみた。すると、「高橋夏三郎氏とは電話で話したことがある。媽祖廟建設の計画は結局、実現しなかった。分霊された媽祖像は自宅の押入に入れたままで、その処理方法をどうするかという話をした覚えはある」とのお返事をいただいた(こちらを参照)。


  その方の受けた印象としては、この高橋夏三郎という人物は台湾とはもともと関係はなさそうだ、たぶん町興しに媽祖様を使おうとしたのではないか、とのことだった。しかし、高橋氏は岐阜市長まで巻き込んで台湾各地の媽祖廟に扁額や手紙を送り続けていたようだから、かなり熱心であった様子はうかがわれる。彼の動機や背景はやはり謎のままである。


  台南大天后宮で見かけたもう一つの扁額には「大天后宮恵存 浄心無二 宮本延人敬題 民國五十六年二月十四日」と記されていた。宮本延人は台湾研究で著名な人類学者である。日本統治期の台北帝国大学土俗人種学教室において移川子之蔵教授のもとで講師を務め、戦後は一時期、留用されて台湾大学教授、日本へ帰国後は東海大学教授となった。


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  台湾でいわゆる皇民化運動が展開される中、台湾在来の民間信仰の合理化を名目として台湾総督府は寺廟整理を進めており、台南の大天后宮も売却整理の対象となった。宮本延人は総督府文教局調査官を兼任しており、関連調査のため台南へ来た。その際、ある信徒から大天后宮がつぶされる危機に直面していると告げられ、宮本はただちに台南州知事と話し、売却処分は回避されたという。彼のその行動が義挙とされて、戦後、宮本の名前の入った扁額が飾られた(こちらを参照)。


  天井を見上げないと気づかないだろうが、よくよく見ると宮本延人の扁額は結構目立つ場所に配置されている。廟に入ってすぐ、真ん中に連戦(李登輝政権の副総統、その後、国民党主席として総統選挙に立候補し落選)、向かって右側に連震東(連戦の父、台南出身の歴史家・連雅堂の息子。国民党幹部)、そして左側に宮本延人という並びである。どうでもいいが、連震東、宮本延人の二人とも慶應義塾大学の卒業生である。


  大天后宮を出て、私と日本の客人とが日本語で話しながら歩いていたところ、それを廟前で花を売っていたおばさんが聞きつけ、「日本人ですか? 大天后宮は経済状態が悪かったとき、ミヤモトさんが守ってくれました」(中国語)と突然話しかけられて驚いた。いや、何が驚いたかというと、台南の大天后宮に宮本延人の扁額があるということを私はこの日に初めて知ったばかりだし、その直後、立て続けに廟前のおばさんからそんな風に話しかけられるなんてことも滅多にない。本当に怖いくらいの偶然だ。


  そのおばさんが言うには、ミヤモトさん(名前は日本語で呼んでいた)が大天后宮を守ってくれたということは小さい頃から聞いていた、とのこと。私たちが礼を言って去ろうとしたところ、そのおばさんが追いかけて来て、ミヤモトさんがその後どうされているのか知りたい、と尋ねられた。私からは、日本へ帰国後、日本の東海大学教授になったと伝えた(台中の東海大学ではありませんよ、と念を押しながら)。


  思い返せば、本当に奇妙な経験だった。と言うのも、私が宮本延人の扁額を見つけたとき、一緒にいた客人に「宮本延人は台北帝国大学土俗人種学教室にいた民族学者ですが、寺廟整理の際には宗教調査官を務めていたんですよね。色々複雑な思いで仕事していたんでしょうね」と適当なことをしゃべったばかりだった。その時、念頭には、宮本延人から扁額が送られた背景として、彼にはある種の贖罪意識もあったのかな、というような想像が働いていたからだ。実際には違った。彼がこの廟を守ったのだった。廟を出るとき、お花売りのおばさんから突然話しかけられたのも、ひょっとしたら媽祖様が私の認識の微妙な誤りを訂正されたのか──真面目にそんなようにも感じられた。


(写真は2019年5月19日に撮影)

【趣旨】
 台湾をテーマとした勉強会を南部台湾(台南、高雄など)で立ち上げたいと考えています。毎回様々なテーマを設定し、意見交換する形で進めます。交流会以上の内容的充実度を持たせつつ、しかし専門的研究会よりはハードルを下げて、台湾初心者でも気軽に参加して交流を深められる情報交換の場として運営していきます。
 要点としては下記の通りです。
1.台湾南部で開催する勉強会。
2.台湾に関するテーマなら何でも話し合える場とする。
3.毎回しっかりしたテーマを選ぶが、参加者個々の知識の多寡は問わず、台湾初心者でも気軽に参加できるようにする。
4.台湾に興味を持つ同好の士の情報交換の場とする。


※追記:「南部台湾勉強会」連絡用のページを用意しました。
http://nanbutaiwan.blog.jp/
開催日程や個別テーマの内容などはこちらをご参照ください。


【目的】
 台北では勉強会的なイベントも結構頻繁に開催されています。しかし、台湾南部在住者にとっては、興味はあっても参加のハードルが高いんですよね。行き帰りに時間がかかりますし、高鐡の費用もバカにならないし、懇親会参加希望なら泊りがけも覚悟しないといけませんが、翌日に授業や仕事があるからそうもいかない…。
 勉強会的イベントのメリットは、もちろん内容的関心もさることながら、同じイベントに参加することで、関心を共有もしくは関心の近い人たちがお互いに知り合い、情報交換の人的ネットワークにつながっていくという側面も大きいと思います。台北ではそうしたイベントが比較的盛んなので、情報交換的ネットワークにつながる機会もそれだけ多いわけですが、南部にはほぼありません。
 台南でも、例えば言語交換会とか、たまり場的なゲストハウスでの交流会とか、そうした感じのイベントはあります。しかし、前者は言語習得が第一目的ですし、後者は呑み会メインで、文化的関心を持ち寄って話し合えるような雰囲気ではありません。また、南部台湾在住の研究者を中心とした研究会もありますが、一般人には参加のハードルが高いでしょう。交流会以上の内容的充実度を持ちつつ、誰でも気軽に参加できるような勉強会がありません(ありましたら教えてください。私も参加したいです)。従って、自分たちで立ち上げるしかありません。
 勉強会という表現は無味乾燥ですが、要するに、台湾に主体的関心を持つ人たちが集まって雑談しようという趣旨です。ただ漫然とおしゃべりするだけではしまりがないので、毎回テーマを設定して、意見交換する形にします。知識量の多寡は問いません。知らないことがあれば、知っている人から教えてもらえばいいのですから。台湾初心者でも気軽に参加して、一緒に勉強できる場にしたいです。


【参加想定者】
 南部台湾在住者が、台湾について各自興味あるテーマを持ち寄って雑談しながら交流を深める機会をつくりたいというのが基本的な目的ですが、もちろん在住者以外も歓迎します。台北など他地域や日本からお客さんがいらっしゃる機会に合わせて開催することも考えられます(ゲスト講師をお呼びするなんてこともできたらいいですね)。それこそ、観光で来た人が、たまたま勉強会開催日だったのでついでに顔を出してみる、というのもあり得ます。
 それから、留学(中国語センターへの短期留学も含む)や仕事で南部台湾での生活を始めたばかりだけど、まだ現地に知り合いがいないという人にも来て欲しいです。私自身、台南へ来たばかりの頃、ある研究会にお誘いいただき、そこで知り合った方々を通して色々な可能性を模索できるようになったという実体験があります。これは本当に助かりました。
 人的交流は、情報交換という実際的側面だけでなく、特に異国で生活する上では精神的な安定の面でも重要です。自分の性格にあった人的ネットワークを選べればいいのですが、例えば若い留学生でしたら言語交換会がいいでしょうし、飲み会的交流が好きな人はゲストハウスの交流会に参加するのがおすすめです。対して、この勉強会は文化的関心でおしゃべりしたいという人の受入元になれればいいと考えています。
 メンバーシップを固定的にはしません。間口を広げて、台湾に関心を持つ人なら誰でも気軽に来られるようにしたいです。毎回テーマを設定し、何らかの形で事前に告知するようにしますので、各自の興味あるテーマのときだけ来るという感じで構いません。
 日本語話者が中心となりますが、もし台湾人の参加希望者もいらっしゃるようでしたら、もちろん大歓迎です。


【活動形式】
 発起者(つまり黒羽)が台南在住の関係上、差し当たっては台南で開催します。ただ、高雄の方々とも交流したいと考えていますので、高雄からの参加者も見込まれるようであれば、台南・高雄交互開催という方向性もあり得ると思います。
 最初は少人数で始めますので、どこかカフェに集まって雑談する形とします。当面は一、二ヶ月に一回程度の不定期開催となるでしょう。人によって参加可能な時間帯が異なると思いますので、参加予定者の事情によって開催日時を決めます。ある時は平日夜、ある時は土日の昼間という感じにフレキシブルにするかもしれません。
 活動内容としては、毎回テーマを決めて、それについて誰か(たぶん発起者たる私でしょうが、そのテーマに詳しい方にお願いするかもしれません)が論点整理的に話題のきっかけを提供し、あとはみんなで意見交換するという流れにします。
 あるいは、台湾に関する日本語書籍、もしくは台湾で評判になっている中国語書籍(文学作品も含む)を一緒に読む読書会もありだと思います。こちらの方で参加者が見込まれるようであれば、勉強会とは別に、独立した読書会を行うことも検討できます。
 また、こうした勉強会の一環として、街歩きや史跡巡りなどの戸外学習の企画も立ててみたいと思います。平たく言えば遠足ですね。ひょっとしたら、この方がむしろ人が集まりやすいかもしれません。


【想定されるテーマ】
 台湾に関する文化的・社会的事象であれば、あらゆることがテーマになります。歴史、民俗、生活文化、政治・社会問題、文学、映画、アート…私自身の専門は台湾史ですが、興味対象は幅広いつもりですので、柔軟に対応できます。例えば、美食や旅行を取り上げるとしても、その背景をなす歴史や社会への視点があれば、話題を色々な方向へ広げて意見交換ができるはずです。
 いま思いつく範囲で想定されるテーマを列挙してみますと下記の通りです。もちろん、これらに限らず、参加者の意見に応じて色々な企画があり得ます。こんなテーマに興味がある、と意見を出していただければ、前向きに考えていきたいです。

■勉強会
・民俗:台湾の神々、廟の社会的役割、東アジアにおける媽祖…等々
・生活文化:牛肉湯の起源と影響、素食料理、台南料理はなぜ甘いのか?…等々
・リノベーション建築と町おこしの意義
・日本語世代の方からお話をうかがう
・最近の台南本を論評する
・読書会:希望に応じて本を選ぶ
・映画:最近上映された映画、もしくは好きな映画の感想を語り合う
・台南の歴史的重層性:平埔族、オランダ時代の痕跡、清代の寺廟、日本時代の建築…等々
・台湾原住民文化
・台湾のエスニック・アイデンティティー(台湾/族群/原住民認定)
・キリスト教と台湾社会
・仏教と台湾社会
・眷村文化
・台湾の若者意識
・台湾サブカルチャーと日本
・総統選挙の見通し
・日台関係、中台関係をどう捉えるか?
・外国人労働者問題

■戸外学習
・台南市内の寺廟見学、もしくは廟会を見に行く
・台南市内の日本建築見学
・旧製糖工場見学(總爺、蕭壠)
・台南の旧軍関係施設(成功大学、台南公園周辺、水交社)
・平埔族の痕跡をたどる(佳里、左鎮など)
・キリスト教伝道をたどる
・台湾で日本人が祀られた廟(飛虎将軍廟以外も)
・安平散歩
・塩田の歴史
・北門烏腳病紀念館
・焦吧哖紀念館(玉井)
・新化老街(楊逵紀念館)
・高雄のハマセン散歩

(2019年5月13日、黒羽夏彦記)

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